vol 1485 2008.04.17
● 松崎運之助さんのこと
『公評』という雑誌がある。28歳の時から、かれこれ30年、毎年3本のペースで寄稿している。
毎月、送られてくる雑誌を読むと、おなじみの著者に気づく。教育関係では、ぼくと野本三吉(加藤彰彦)さん。元小学校教師で、その後横浜寿館に勤務し、日雇い労働者に関わる。その後、横浜市立大学から沖縄大学に転じ、「沖縄子ども文化史」を公評誌上で論じている。ぼくは、昔からのファンだ。もう一人が松崎運之助さん。面識は、ないが夜間中学校で識字教育に関わる姿勢に心からの敬意を表していた。その著書『学校』(晩餐社)は後に山田洋二によって、映画化される。
思うにぼくと松崎さんは同じ教師だったが、その仕事は両極端に位置するように思う。ぼくは、学校とは自分が楽しいと思ったことをバリバリ授業化し、教材を媒介にダイアローグしていくタイプ。かたや松崎さんは、授業以前の問題を抱えている生徒が対象だ。とても、ぼくにはできそうもない仕事をしているなあと尊敬の念を禁じえない。
それぞれ現場や教育に対する姿勢は違うが、そのどちらもが、やはり「学校」なのだろう。
もうひとつ、松崎さんがすごいなあと思うことがある。マスコミなどに取り上げられると、学校現場を離れていく教師が多い。現場を離れては学校のことがわからない。生徒のこともわからない。だからぼくはヤンキー先生や夜まわり先生を信じない。松崎さんは、一貫して現場を貫いた。これにも頭が下がる思いだ。
ところで今月号の『公評』に松崎さんが『渡る世間の信用と信頼』というタイトルで夜間中学校の生徒<イノさん>(映画では田中邦衛が演じている)の思い出を書いている。また、著書『学校』が幻冬舎から文庫として出版された。合わせて読むことをお勧めする。
※ 『公評』の原稿、『渡る世間の信用と信頼』を読んでみたい方は、ジャパンフレネにご連絡下さ い。コピーをお送りします。