VOL 1500 2008.5.29
● いろいろな桃太郎(3)
桃太郎観の変遷については『桃太郎像の変容』滑川道夫(東京書籍 1981)や『桃太郎の運命』(NHKブッックス 1983)に詳しい。
※ 上記の文献は、いずれも絶版になっていて古本屋か図書館で調べるしかない。『桃太郎像の変容』はかなり高い。ぼくは、新宿図書館を利用した。『桃太郎の運命』は、古本屋で手ごろな値段でゲット。
さて五味太郎の『ももたろう』(絵本館)は、桃太郎と鬼の共生(異質なものの共生・共存)という観点で書かれているのだが、この観点で童謡や唱歌の『桃太郎』を見ても面白い。
まず童謡『桃太郎』を見てみよう。
三番・四番はこうだ。
そりゃ進めそりゃ進め、
一度に攻(せ)めて攻めやぶり、
つぶしてしまえ鬼が島。
おもしろいおもしろい、
のこらず鬼を攻めふせて、
分捕物(ぶんどりもの)をえんやらや。
とにかく、すさまじい・・・。対話もへったくれもない。
この対極・・・、鬼の立場からみた童謡がこれだ。
『鬼の子守唄』
阪田寛夫作詞・中田喜直作曲
鬼が島の鬼の子は
やっぱり夜ふけに泣くのです
こわいよ かあちゃん
桃太郎がきたよ
はちまきしめて
のぼりもたてて
ガッパ ガッパ ガッパ ガッパ
海からきたよ
ねんねよ ぼうや
桃太郎もねんねだよ
西の空まっくろけ
東の空まっくろけ
ガッパ ガッパ ガッパ ガッパ
こんやはさむい
鬼が島の鬼の子は
やっぱり夜ふけに泣くのです
『桃太郎』というテクストを完結したものとして読むのではなく、鬼の立場から読んでみても面白い。