デイリーフレネ

VOL 1525 2009.06.11

『いろんな世情がありまして、人はそれぞれ惑います・・・』(2)


PARAT 1 変わらない世情―学ぶということ

「げ~んま~いぱ~ん」
窓の外に向かって口ずさむ、はる坊。
「何してるの?」
「玄米パンが来ないかなぁって。呼び寄せてるの」
最近、フレネの近くに玄米パンの移動販売車がやって来る。はる坊の願いが通じたのか、
「げ~んま~いぱ~ん」
こだまのように、パン屋のアナウンスが聞こえてきた!
「来た!!」フレネを飛び出して行くはる坊・りょうちゃん・たく。
なぜみんなダッシュでパン屋を追いかけるのか?―それは、居場所が特定されないから。なにせ相手は移動販売車。しかも結構なスピードらしい...。
みんなが本気で走っていく様子、窓からみていておもしろかった!

こんなのどかな風景のフリースクールジャパンフレネ。ジャパンフレネがオープンしたのが1999年の4月...。この春で10年目を迎える。この間、ジャパンフレネと子ども達の契約は「スケジュール表を書く」ことだけ。しかし、これがなかなかできない。


学校は1時間目から6時間目まで分刻みに何をやるかスケジュールが決まっている。この集積は一日→1週間→1ヶ月→1学期→1年→6年(小学校)&3年(中学校)のカリキュラムとして望む・望まぬとに関わりなく位置づけられている。


本来学びとは自分自身との契約であり、誰から強制強要されるものではない。また学びとは金銭との等価交換で与えられる質のものでもない。
神戸女学院大学の内田樹氏は、子どもが母国語を学習することを例に出し、子どもは「すでにゲームが始まっており、そのゲームの規則を知らないままに、プレイヤーとしてゲームに参加させられる」という仕方で言葉に出会うことを述べた後、学びについて次のように述べている。


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このプロセスの驚嘆すべきところは、規則を知らないゲームをしているうちにプレイヤーがその規則を発見するという逆説のうちにあります。まわりの人々の発する音声が意味を伝える記号であることがわかったのは、意味不明の音声について、「これは何かを伝えようとしているのではないか?」という問いを子どもが立てることができたからです.

この謎めいた音声は何かのメッセージではないのか?これらの記号の配列には何らかの規則性があるのではないか?これがすべての学びの根源にある問いかけです。


学ぶことの全行程はこの問いを発することができるかどうかにかかっています。そして、「そうすることで、あなたは何を伝えたいのか?」という起源の問いを問うもの自身が発する以外にはありません。誰も彼に代わって、この問いを発することできません。


私が「学びの主体」と呼ぶのはこのことです。


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6歳から20歳までの人たちが集まる空間=ジャパンフレネの中で上記のような不思議に遭遇し自ら問いを生み出すような体験をしてもらいたい。その問いが本物であれば、自分自身の学びのカリキュラムを表現する必然性ができてくるのだろうそういった意味で子どもがスケジュール表を書くことができるような日常をぜひ提供していきたい。


そんなことを思う春の一日であった。
(PART 2に続く)

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