VOL 1529 2009.0618
先日、甲府の小学校で6年生32人を対象に算数(体積)⇔理科(空気と水)にまたがる授業をしてきた。最近、以前やったことがある授業は、極力避けるようにしている。同じ授業だとぼく自身面白くないのと、どうしても以前の子どもと今の子どもを比較してしまうからだ。例えば授業がうまくいかない場合、「前の子どもは、こうだったのに・・・」と授業の失敗をこどもんぽの責任にしてしまう。授業は、「知らないこと」から出発しなければ、「何故だろう?」という問いが生まれてこない。子どもも教師も自分の心の中に問い=事件が生まれないと楽しくない。
今までの授業レシピでは、次のように『体積』を導入していた。
ダイアローグ ① トルネードチューブでつないだ二本のペットボトル、上部には水。水は落ちない。「なぜか?」→物は場所をとる。同じ場所に二つのものは同時に存在できない。物がとる場所の大きさを「体積」という。 |
② 「上の水を」下に落とすには、どうすればいいか?下のペットボトルの空気が上に移動すれば、水は下に落ちる→ペットボトルを回す→トルネードができ空気が移動、水は落下 |
③ 「本当に空気は移動しているか?」→下のペットボトルにタバコや線香の煙を入れ、トルネードさせる→煙が上部に移動 |
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キーワード 物は場所をとる |
タイトル ザ・トルネード ※ 「空気と水」の新バージョン (高学年用) |
④ ※アルミ缶底に穴一つ ※アルミ缶底に穴二つ ※アルミ缶底に穴多数 上記で中の飲み物は、下に落下するか?どうすれば、落下?→キャップをねじる |
仕掛け(留意点) ・ 1.5リットルのペットボトル2本、トルネードチューブ、青絵の具少々、アルミ缶の飲み物(未使用)1本、千枚通しかキリ、コップ、網杓子、水受け用の洗い桶を準備する |
素材 空気と水 |
ねらい 物質の属性である「体積」の概念をベースに物質の移動(空気と水の相互移動)について考える |
⑤ コップ一杯の水に百円ショップで買った網杓子をかぶせてひっくり返す水は洩れるか?さらに目のあらい網杓子でもやってみる→表面張力の関係 |
同じパターンで授業したくないので、導入を次のように変更。
① いたずら道具やマジックの道具で子ども達を驚かす。
「今日は、いろんなものを持ってきたよ。例えば、この黒い箱、三つのボタンのうちどれかをおすとブザーが鳴る。今は、赤いボタンを押せば鳴る。黄色や青は鳴らないよ。じゃあ、どれが鳴るか、押してみて」
ところが今度は赤を押しても鳴らない。????いくらやってもぼくが押す三番目しかならない。
・不思議
・びっくり
・驚き
・どうして?
② 上記の反対にあたる言葉を発表する
・普通
・あたりまえ
③ 「じゃあ、当たり前のことなら説明できるね?」
大きい鉄球と小さいビー玉を見せて「どっちが大きい?」
鉄球が大きいと子ども達は言うけれど、何が大きいか、どうして大きいと言えるかが説明できない。
④ 「粘土で鉄球をくるみ、カッターで半分からカットするよ」
鉄球の取っていた場所が空洞になっている。そこにビー玉を入れて振ると「ころころころころ」音がする。
ものは場所をとる→ものが取っている場所の大きさを『体積』という→ものは一つの場所に同時に存在できない→同じ場所を取るには移動してもらわなければならない。
こんな感じで体積の概念を提示。教科書には「もののかさのことを体積という」というなんともわけがわからない説明しかのっていない。
この後、二つのトルネードチューブを使い、上のペッtボ
「」トルに入っている水を下のペットボトルに落とすには、どうしたらいいかを考え、様々な実験を行っていった。
授業は90パーセント、教材(テクスト)が決める。トルネードチューブというテクストでいろんな意見がでてきて盛り上がった授業だった。
授業終了後、「もっとやろうよ!」、「次の時間もやって!」、そして放課後、校長室に多数の子ども達がやってきて「毎週来てください」とうれしい悲鳴。
子ども達、実にいい顔をしていた。映像をみてください。
全員が感想を寄せてくれました。何人かの感想文を紹介しましょう。
● 私は、この授業の中で「ふしぎ!どうして!」と自分の思いや考えが持てました。そして木幡先生
の行動に目が引かれました。「ふしぎ!どうして!」という自分の思いや考えは、先生のした行動に
あったのかもしれません。そして先生は、「体積とはなにか」を教えてくれましたね。言葉だけでな
く、説明があり、実際にやってくれて「体積ってこういうことだったんだ」と思いました。「算数トリック
みたい!もっといろいろやってみたいな」って算数大嫌いな私が思ったのは、この授業のおかげで
す。私は、算数と理科ってつながっているのかなあと思いました。私は、先生がまた6-2に来てく
れるのを卒業するまで待っています。昨日、やってくれた授業よりもっと私の心が揺れるような授業
をしてください。
● 昨日は体積ということを楽しく学ぶことができました。ペットボトルの水を落とすにはどうしたらよい
かを楽しく考えたり、他の子の意見を聞くことができてよかったです。また、いろいろな実験をして不
思議だなあと思うことがたくさんありました。自分の意見と他の子の意見を聞いて、意見を変えたり
することが大切だということもわかりました。木幡先生の授業では、意見を考えたりするのが苦痛で
はなく、みんなで答えを楽しく見つけることができました。