デイリーフレネ

VOL 1530 2009.06.22

● テレビ番組を観て感じたこと-手間ひまかけたテクスト


先週、NHK総合TV午後7時30分のクローズアップ現代で『10歳の壁』と題して、教育特集が組まれた。この日は、出張個人レッスンのため帰宅が深夜。BS2での再放送を途中から観た。


途中からのため『10歳の壁』の意味がよくわからなかったが、百マス計算に代表される鍛錬型教育の弊害・・・、タイムを競うことの無意味さを東京大学の佐藤学氏他が展開していた。同時に、それに代わる実践が幾つか紹介されていた。


一つは、学習塾での実践。問題を絵に描いて考えるというもの。このことで問題のイメージがクリアーになり、文章問題が解きやすくなると紹介されていた。


もう一つは、山梨県の山あいの小学校(ぼくは、この小学校では何度か授業したことがある)での割り算の実践。228個(だったかな?)のキャラメルを3人で分けると一人あたり何個?という課題をあれこれと考える。


すでに筆算を知っている子どもが「228のうちまず22を3で割る。3×7は21。残りの18をまた3人でわける」と説明。しかし、どうして最初に22を3で割るかを説明できない。そこであれこれ考えるという授業だった。教師は一箱10個入りのキャラメルを二十数箱用意しておく。そこから一箱10個入りのキャラメル22箱をまず3人で分けるということに気づく。一人当たり7箱(70個)の意味がわかる。少人数(確か10名未満)のクラスだから、対話がきちんと成立する。オーソドックスな授業だった。


この二つの実践、水道方式で算数を教えている教師なら当たり前の実践で、こうなるだろう。1のタイル、10のタイル、100のタイルのイメージをしっかり捕まえているなら、『2枚(100のタイル2枚)のタイルは3人でわけられない→2枚のタイルをばらして10のタイル20本にする→もともとあった10のタイル2本をたして、22本を3人でわける』という流れが理路整然と生まれてくる。特にタイルを使わなくてもわかればいいのだが、担任教師(これまたぼくがよく知っている教師)は、タイルを使った実践を知らなかったのかもしれない。何故なら、最初から一箱10個入りのキャラメルを用意していたからだ。100のタイル1枚を10分割していくという発想が重要で、水道方式を実践している教師ならば、キャラメルを最初から提示することはないだろう(提示しなくても子ども達は、10進構造を使い、分割していく。キャラメルを使うならさらに1ケース10箱入りも用意しておく必要がある)。水道方式で鍛えられているクラスなら、流れは全く違う授業になっていただろう。


絵を描く実践(例えば、ぼくの場合「ウサギのお耳は2本。ウサギ三匹でお耳はいくつ?絵に描いて説明してみよう」)など30年前から実践している。タイルの算数もしかり。佐藤学氏は、これらの実践を「子どもたちの交流がある」と絶賛していたが、このような実践が何故一般化しないのかを考えて見なければならない。
※ 拙著『算数のできる子どもを育てる』(講談社現代新書)参照


山梨県教職員組合の教育研究集会算数分科会を中心に、25年間、あれこれと言い続けてきたが、教育実践の中身は、25年前より低下しているといっても過言ではない。構造的にはさほど難しくない問題をあえて難しくし、<多様な考えや意見を出させる>などが山梨大学付属小から出てきたり、教科書一辺倒の実践が多くなってきた。


『わからない子どもがわかる実践が一番良い実践だ』
このことの意味を教師は、噛み締めなければならない。教科書を読んでわかる子どもはいい。
そこに照準をあてて授業するのは、簡単だ。問題は、それ以外の子ども達だ。


ぼくの結論は、こうだ。
手間ひまかける楽しさの体験を教師がしなくなった。「こうしたら子どもは、どう反応するか」わくわくしながら教材研究する教師がいなくなった。授業は、テクスト(教材)で90パーセントは決まる。教科書程度の低いレベルのテクストをあれこれこねくりまわしてもそれ以上の授業には、ならない。


学校が雑務で忙しかったり、管理体制が確固なものとなったことも仕事をしにくくなった要因ではある。しかし、教育実践とは生身の人と人のぶつかりあいだ。教師が楽しくなければ、子どもは楽しくない。手間ひまかけた実践を年に1回できるならば、その教師は大きく変わるだろう。


このことをうまく伝え切れなかった団塊の世代の責任も大きい。同世代として、ぼくのなしうる仕事は何か再吟味していく必要がある。番組を観てそんなことを感じた。


手間ひまかけたテクスト・・・、それがあれば、教師があれこれ言わなくても子ども達は動き出す。

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