NO1552 夢と希望(1)―エルアルト 2009.11.12
昨夜、NHKBSハイビジョン『世界一番紀行―天空の都市で暮らす庶民の夢』を観た。過去4回訪れたボリビアの特集だ。最初の旅で、ボリビアの首都ラパスの玄関エルアルト空港に降り立った瞬間、高山病に・・・。高地順応せずにブラジルのサンパウロから一気に高地に降り立ったのが原因だった。エルアルト空港は、標高4150メートル地点にある。降りた途端に動悸・息切れ・めまい・・・。いやはや、大変なところにやって来たと思ったものだ。
今回のハイビジョンは、そのエルアルトの街を取材している。これを観るまでエルハルトはラパスの一部と思っていたが、すでにラパスから分離しているとのこと。ちなみに首都ラパスの人口は、83万人、エルアルトは89万人でボリビア一の人口を抱えている。ラパスはすり鉢状の一番底、エルアルトは最上部に位置している。富裕層が空気の濃いすり鉢の底に住み、貧困層が空気の薄いすり鉢の上部に徐々に押し上げられエルアルト市を形成した。ラパス市街でも標高は3600メートルある。
エルアルトはラパスから分離し、ポトシ(4070メートル ボリビアの鉱山都市)を追い抜いて世界最高所の都市になった。酸素濃度は平地の三分の二、紫外線は平地の1.4倍。冬(7月8月)の温度差は30度(-10度~20度)。
ここに住むのは、大部分がチョリークと呼ばれる先住民だ(インディヘナとも呼ばれる)。カメラは、エルアルトでチョリーク女性が身に着けるポリエラ(スカート)を手縫いする女性の家族を密着取材する。女性は、アルティプラと呼ばれる4000メートル級の大平原の貧しい家に生まれ、15歳でラパスの白人富裕層の子守として雇われる。子守をしながら料理人の技をメモし、料理人に転進。その後、コックをしながら裁縫学校に三年間通い、自立。最初の奉公先で運転手をしていた男性と結婚し、今は一戸建ての住宅をエルアルトに購入し、三人の子どももいる。ポリエラを日本製のミシン(ジューキ)で縫う。テレビやステレオはあるが洗濯は手洗い。暖房設備は、無い。なぜかアンバランスな生活だ。
長々と書いてきたが、彼女やその子ども達には、夢がある。貧しい生活から何とか脱却し、子ども達に豊かな教育をと努力する母親・・・。「お母さんが病気になったら診てあげたいので、医者になりたい」と言う娘・・・。まさしく、昭和20年代後半~30年代の日本そのものである。暮らしの中に"戦後"があった時代、貧しさからの脱却に誰もが精一杯生き、学校に夢や希望があった時代・・・。みんな活き活きし、輝いていた時代・・・。
昔を懐かしむことは、あまり意味が無い。佐賀のがばいばあちゃんに言わせると、こうなるだろう。
「時計が左に回ったら、壊れたと思って捨てられる。人間も昔を振り返らず、前へ前へと進め!」
「人間は死ぬまで夢を持て!その夢が叶わなくても、しょせんは夢だから」
しかし、エルアルトの子ども達の瞳は輝いていたなあ。貧乏だけれど幸せ・・・、そんな瞳だったなあ・・・。また、ボリビアに行きたくなった・・・。そんな夜でした。
次回もボリビアのことを書きます。