NO 1580 『指・手』を使うこと 2011.06.07
今から30年以上前のことだが『手の授業』をしたことがある。人間の指は、サルやチンパンジー、オランウータンと違う。手形をとってみると、すぐわかる。人間以外の動物の手形は、親指・人差し指・中指・薬指・小指の腹全てが、べたっと手形としてうつる。しかし、人間の指は違う。親指の腹はうつらない。
親指の腹は、他の指の腹にくっつけることができる。これを『親指の対向性』といい、人間にしかない特徴だ。この『対向性』により、人は次のような行為が可能になる。
つかむ・つまむ・はさむ・にぎる・はじく・ほどく・にぎる・もつ・・・etcetc。
上記のような行為で人は、他の動物を凌駕して生きてきた。これらに関して、古くはエンゲルスの『猿が人間になるについての労働の役割』に詳しい。
ところでこの4月、会員の入れ替えがあり新会員が増えた。ジャパンフレネでは、毎週、『お料理の授業』を行っているが、新会員と旧会員を見て歴然とした差があることに気がついた。『お料理の授業』では、食材の調達・調理・後片付けなど全て、子どもの自主性にまかせている。
皮をむく→ピーラーなら可能だが、包丁では全く出来ない。
卵をわる→わるのではなく、握りつぶす。
大根や人参を千切りにする→太いチョークのようにしか、切れない。さいの目も同じ。
驚いたことに、お米をビニール袋から出して、米びつに入れることができない子どももいたことだ。
つまり、ビニール袋の結び目を解くことができない。無理やり結び目を引っ張り、お米を床にばらまいてしまう。
今の子ども達には、鉛筆、クレヨンを使って書く(描く)・ハサミを使う・折り紙やあやとり・おはじき・ジグソーパズルなどの遊び系、そして、箸を持つ・ボタンをかける・歯磨き・タオル、雑巾等を絞る・ほうきではく・布団や洗濯物をたたむ・アイロンがけ・マイ包丁での調理などのお手伝い系の作業が極端に少なくなっている。その結果が、これである。ジャパンフレネOBの高校生が言っていた。「キャンプの時、マッチを擦って火を起こす事ができるの一人もいないんだよ」・・・。
乳幼児の時に戻ることはできない。
今考えていること・・・、『むくとはぐ』の違い→むく練習、『ものをつつむ』とは何か→風呂敷の使い方あれこれ、そして『手の授業』・・・。
残されている時間は少なく、やらねばならない授業は、かくも多い・・・。