デイリーフレネ

NO 1681 après-coup(アプレ・クー)への道―迷うための地図を求めて(5)2019.11.28



Part5 彌永 健一さんからのお便り

 

アプレ・クー・・・。

とにかく、目についたことにチャレンジしてみる。

気になった本は買っておく。後書きと前書き、そして目次だけは読んでおく。

いつしか熟成され発酵し、不思議なうながしが現れてくる。

それまで、じっと待つ・・・。

 

不思議なうながしが現れるまで、時間がかかることもある。すぐに現れることもある。

先日、南池袋の古書店『往来座』をのぞいた時、入り口横の片隅に小引き出しを見つけた。二十数個の小引き出しがついている。3万円という定価に迷ったが、キャッシュで購入。

 

フレネスペースで子ども達と小引き出しを掃除していると、

「木幡さん、引き出しの奥の方に手紙がたくさん落ちているよ」

「お金が入っているのかなあ?」

手紙は全て海外からのモノ。アルファベットから名前を推測してみて、思い当たる節があった・・・。Syoukichi Iyanaga。

 

ウィキペディアで調べてみると、どんぴしゃ!彌永昌吉(いやなが しょうきち)。

著名な数学者である。東京書籍の算数・数学の教科書編纂にも関わり、フランスのレジオンドヌール勲章を受章し、フィールズ賞の小平邦彦を育てている。

しかし、2006年、100歳でお亡くなりになっていた。ご子息健一氏が東京海洋大学の名誉教授をなさっているので東京海洋大に連絡。手紙を発見した旨伝えると、人事課から健一氏に連絡の上、こちらに折り返すとのこと・・・。

一時間も経たないうちに、健一氏から電話が入り、書簡をお送りすることになった。

数学をちょっとだけかじり、師匠は遠山啓であることを話すと、「水道方式の遠山先生ですね」と親しみのあるお返事。

 

そして、二日後、彌永健一氏より下記のようなメールをいただいた。

 

 

木幡寛さま

さっそく父の残したものをお送りいただいてありがとうございました。父のことを思い出しました。

それと、「アプレクー」など、興味深いもの、ありがとうございます。とても、大事なことをしておられるのですね。

わたしも、数学、科学、社会的コミットなどの場で、大事なことは批判精神だと思っています。木幡さんのお立場と通じるものがあると思いました。

ネイティブアメリカンのこともご存じなのですね。わたしも大昔に「ブラックエルクは語る」という本を訳したりして、いくらか縁があります。

「クー当て」はラコタ族が使う言葉だと聞いています。彼らは、圧倒的な力を誇る相手に

対しても戦うことを誇りとしていた部族ですが、闘いのなかで最も英雄的な行為は相手を殺すことよりも、相手の身近まで近づき、相手の体に素手で触ること、それを「クー当て」と呼んだとも聞いています。

父の書棚のおかげで、不思議な縁ができ木幡さんとつながったように思います。ありがとうございます!

                        弥永健一

 

 

驚いた!今、最大の関心事であるアプレ・クーに関連するネイティブアメリカンの『クー』についてご存知とは・・・。早速、「ブラックエルクは語る」をアマゾンで注文したのは、言うまでもない。

  『ブラック・エルクは語る-スー族聖者の生涯』

        J・G・サイハルト著 弥永健一訳(1977社会評論社)

 

※「スー族」はアメリカ大平原に住む3氏族からなる部族連合であり、この部族連合ではそれぞれ「ラコタ語」、「ダコタ語」、「ナコタ語」という3つのスー語方言が話される。

 

クー当てを『スー族 クー当て』で検索してみたら、ウィキペディアでヒットした。

 

スー族は馬を使って大平原で略奪を行い、また他の平原部族と、栄誉あるスポーツとして「馬の盗みあい」を繰り返した。馬は個人・部族の勢力を表すものとなり、貨幣のない社会で実質的に貨幣となった。かれらは先の湾曲した「クー・スティック」で敵方の身体を打つ(フランス語で「クー、coup」)という、クー遊びを最大の娯楽とした。クーは戦士にとって無上の栄誉とされ、一叩き毎にその戦士の「羽根冠」に鷲の羽根が追加された。

 

そして、スー族のことをあれこれ調べていくと、そこに現れてくるのは、ヨーロッパ移住民の侵略と略奪の歴史である・・・。

リゾームは、ぼくをどこに導こうとしているのだろうか?

ネーティブアメリカンの歴史は、長い間授業化してみたいテーマの一つでもある。

彌永さんとの出会いも、典型的なアプレ・クーである。

小引き出しを購入しなければ、こういう展開にはならなかったはずだから・・・。

(続く)

 

 

 

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