デイリーフレネ

NO1613村田さんとぼくのこと(17) 2012.03.09

【閑話休題】フィンランド、オランダ、フレネ・・・

昨夜、オランダの教育についてNHK総合が放映した。あまりテレビは見ないのだが、途中から見ての感想・・・。

 

※ フィンランド、オランダ...。風土・歴史・文化・思想が違うところに日本の教育を対比的にあてはめ  ても、あまり意味がないのではないだろうか?日本的風土にどう溶け込ませるか...。フレネ教育者国際集会では、日本の数学教育や歴史教育、かなり評価された。交流が必要なことは、確かだと思う。

 

※ 異年令の子ども達の学びあいにしても、イエナプラン云々の以前に、フリースクールでは当然のごとく行われている。公教育とオルタナティブスクールの連携...、このへんからスタートするのが、手っ取り早いと思う。

 

※ オランダの教育が素晴らしいと思うのは、素晴らしくないと思われる教育が対極にあるからだ。それを打開するには、TVの中で行われていたように批評・論評することではない。ぼくにとって楽しいことを追求するだけだ(これも、論評だね)。

 

※ 一番違和感があったのは、職業選択のために学ぶという視点...。わからないことがあるから学ぶのが原初じゃないだろうか?就活のための学び?

 

海外の教育思想や教育実践が紹介されると、一時は話題になるが続かない。OECDの学力調査(PISA)でフィンランドが第1位になりフィンランドメソッドが紹介された時、日本の教育界は慌てふためいた。結果、どうなったか?「もっと鍛錬せにゃならぬ」と百マス計算に走るか、とってつけたようなメソッドの模倣・・・。

 

これら新しい潮流に、教員はうまく乗っていけない。『ゆとり教育』や『総合的学習が文科省主導で実施されようとした時も教員は慌てふためいた。何をどうやっていいのかわからない・・・。周りと歩調を合わせなければできない・・・。模倣の域をでない・・・。これは風土・歴史・文化・思想の違いから出てくる根源的なものだろう。これをスポイルして教育の対比をしても意味はない。『ゆとり教育』は間違ってはいない。それを発酵させる土壌がなかったのだ。

※ 上記に関しては『肉食の思想-ヨーロッパ精神の再発見』鯖田豊之(中公新書1966)参照。名著!大ロングセラー!大学時代に読んで納得した。この本で授業も作った。中公文庫版も出ている。

 

ぼくが実践しているフレネ教育もしかり・・・。子どもが行なう朝のお話、教室に常備されている計算カードや印刷機・・・、スローガンとしては「手仕事を学校へ!」を形式的に実践することがフレネ教育なのだろうか?模倣すべきものは多々あるが、日本の教育土壌でどう発酵させ進化させていくかが問われてくる。

 

そもそも『自分のカリキュラム』を作り、一人一人の学びのリズムやペースを重要視するフレネの方法は、フランスやイタリアでも大都市には根付かないメソッドでもある。国家に役立つ教育の確立を目指す公教育にも根付きにくいと言ってもいいだろう。同様に昨夜放映されたオランダの教育も日本には根付きにくいに違いない。精神風土、インフラ、シティズンシップ、クリアーされなければならない問題が日本には多すぎる・・・。

 

後述するが村田栄一は1981年~1982年スペインに遊学し、1982年イタリアのトリノで開催された『フレネ教育者国際集会』に日本人では初めて参加している。それまで『研究として『フレネ教育』はあったが、『実践としてのフレネ教育』はほとんど行なわれていなかったし、紹介もされていなかった。

※ 『シエスタの夢/私のスペイン』村田栄一(理論社 1983)p336~366参照

 

まして日本的教育土壌の中でそれをどう捉え、発酵していくかという視点などあるはずもない。そういった意味で村田栄一は日本的教育土壌に『実践的フレネ教育』の種を播いた最初の人物といっていいだろう。

 

1982年、帰国した村田栄一と劇的な再会をしたぼくは、1984年7月、ベルギーのルーバン大学で開催された『フレネ教育者国際集会』に村田栄一、里見実(当時國學院大學教授)と共に参加するようになるとは、夢にも思っていなかった。明星時代のぼくは、戦後民間教育運動の追試に奮闘していた。

                                           (続く)

 

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