デイリーフレネ

NO1612村田さんとぼくのこと(16) 2012.03.07

【1979~1982】その4

ツイッターに書いたが、製本された学級通信の間から集金袋が・・・。中から旧札3枚が出てきたのもこの頃のこと・・・。修学旅行の積立金を担任が毎月集めていたのどかな時代・・・。酔っ払って駅のベンチで眠り、枕にしていたバッグを忘れ終電に乗ったこともあった。バッグの中には、集金した30万円・・・。翌日、なんか忘れたなあ???はっ!あわてて駅に電話・・・。ありました・・・。終電だったので駅員が回収・・・。

 

● 中学生と接する

明星一年目は、中学2年の担任。初めて数学専科になった。教員全員が自主制作のプリントを使って授業している学校だったので、生徒達は何の違和感もなくぼくの授業を受け止めてくれた。野沢茂さん(後に宮城教育大教授)や松井さんの授業から積極的に盗み、週12時間の授業にチャレンジした(中学校の持ち時間としては、かなり少ないか・・・)。日刊通信『FeberStars』発行。夏・冬・春は生徒達と数学合宿。今でも鮮明に覚えているのは、今はもうない銀座並木座に生徒達と『キューポラのある街』を観に行ったこと・・・。映画の感想を不二家パーラーで語り合った。硬派の映画に耐えられる身体を持った生徒が多数いた時代でもある。

 

 定例研究会

自主的な研究会は毎日どこかで行なわれていた。ぼくも毎週水曜日に行なわれていた理科と数学科合同の研究会に参加した。職員室に併設されていた食堂で夕方5時から深夜まで行なわれていた。クラブ活動の顧問を行なうという概念がない学校だったので、授業に専念することができた。また、夕方4時過ぎたら食堂からくさやの干物の匂いがぷーんとただよい、酒を酌み交わすのが当然といった雰囲気も持つていた。

 

合同研究会の利点は、数学だけのあるいは理科だけの発想で授業を作るのではなく、両者のクロスする部分(共通集合)を探し求め授業化することだった。関数と横バネの実験を組み合わせた授業の流れもここで生まれた。毎週水曜日は、飲みかつ語り・・・、終電をのがし学校に泊まることが何度もあった。「木幡さん、また保健室に泊まったの?!やめてくださいね!」養護の先生によくしかられていた。

 

 公開研究会

毎年、11月には全国公開研究会が行なわれ、千人単位の参観者が訪れた。

公開研究会、連立方程式の授業での一コマ・・・。

ウサギとカメが合わせて20匹。足の数の総数は、46本。ツルとカメ、それぞれ何匹いるか?

ツルをx、カメをyとすると・・・、

x+y=20・・・① あたま数

2x+4y=46・・・② 足の数

②-①×2

「足の数からあたまの数は引けるの?」と授業が進んでいた時のことだ。

「なんで、連立方程式なんかやらなきゃいけないのよ?こんなのやっても意味ないじゃん」と女生徒。

「なるほどね。重要な問題だね。これは、森先生に聞いてみよう。森先生どうぞ!」

ぼくの授業を観に来てくれた森毅さんに話題を振った。

※ 森 毅

当時、京都大学教授。数教協副委員長。ぼくの師匠の一人でもある。2011年逝去。よく、ご一緒させていただき、数学以外のことを学んだ。曰く、いかに道をはずれ、いかに学ぶか。また、たくさんの不思議創刊第2号『はてなし世界の入り口』(福音館)を一緒に作った。この時、挿し絵を描いていただいたタイガー立石さんも今はもういない・・・。

 

「なんで連立方程式をやるのか?そやなあ、大人になったら誰もやらんからとちゃうか?今のうちにやっとき」

けだし名言!からからと笑う森さんの姿が忘れられない。

 

「木幡君、明星にいたんだ!」

大学をドロップアウトし姿を消したぼくを明星の公開研でみつけ、かつての同級生は、驚いていた。

1979年はこうして終わっていった。

                                                        (続く)

 

 

 

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