デイリーフレネ

NO1618村田さんとぼくのこと(22) 2012.03.23

【1982年から1985年】 その3 『フレネ教育者国際集会』(1984 ルーバン)(1)

フレネ教育については、1982年、スペインからの遊学から帰った村田さんから初めて聞いた。

※ 村田さんは、1982年、イタリア・トリノで行なわれた第14回『フレネ教育者国際集会』に日本人として初めて参加。このことについては、『シエスタの夢/私のスペイン』村田栄一(1983 理論社)参照。

 

フレネ教育とは、セレスタン・フレネ(フランスの教育者 1886~1966)の名前からきている。

簡単に言うなら、「自分の時間割(カリキュラム)は自分で作る」ということ。伝統的な教え主義から決別し、子どもを主体とし、具体的実践を重視する。

1996年、日本で行なわれたフレネ国際集会のパンフレットからフレネ教育の特徴を見てみよう。

※は木幡注


【自由作文】

天下り的テキストの押し付けを排し、子どもに表現を返すところからフレネ教育はスタートします。

自分の生活を素材とした作文や自由研究の発表と討論など行います。 

※ 今、話題になっているフィンランドの教育もほとんどこれと同じスタイルです。

【学校印刷所】

子どもたちが自分の声で語ったことは共同批判を経て印刷されます。

印刷物をテキストとして使用します。

※ 現代ではパソコンやインターネット技術が発達しているので「印刷」にこだわる必要は、ありません。フレネの生きていた時代に比べ、総合的学習は飛躍的に向上しています。ジャパンフレネでも子ども達は、インターネットを駆使し、さまざまな調査をし、自ら文集も作っています。

【学校間通信】

表現とコミュニケーションの組み合わせにより、学校生活と日常生活との結合を確かなものとします。

個々の表現、マイペースの学習は、互いのコミュニケーションのなかで位置付けられ、鍛えられます。

他地域とのコミュニケーションで共同研究が展開していきます。

※ これもまたインターネットで飛躍的な向上が望めます。

【学習の個別化】

基礎・基本を獲得していくための学習は、個々のレベルに合わせた課題を個々のリズムで考えていきます。そのためには、各教科の学習カードや教材ソフト、資料、道具類が手の届くところになければなりません。教室はそのことにより、子ども達ひとりひとりがマイペースで活動する仕事場(アトリエ)となります。

※ ジャパンフレネのスペースには、さまざまな教材が準備され、一人一人のリズムで学習できるよう工夫されています。

【学習プラン】

毎週の時間割を自分で作り、達成状況も自分でチェックします。何をするかわかっているので、教師の指示待ちをする必要がありません。

※ これが一番難しい。指示待ちは簡単ですが、自己決定ほど難しいことはありません。

【実験的模索】

なにかを指示されたり伝達されるのではなく、なぜそうなるのかを子どもたち自身で模索していきます。解決に至る過程と理解度が問われます。

※ これもジャパンフレネの基本の一つです。

【学級共同組合】

いきなり大人に頼ることなく、自分で学習を組織する子ども達は、互いの空間を自治の原則で組織していきます。

※ 子ども達が自分達の「憲法」を持つことが必須です

 

セレスタン・フレネについては、こちらから・・・。

http://www.jfreinet.com/educat/free002.html

 

「来年(1984年)ベルギーのルーバンで開かれる、フレネの会議に参加してみないか?勉強になるぞ。日本の教師と発想が違う。生で確認するいいいチャンスだ」

新宿二丁目界隈で酒を飲みながら村田さんの誘いに乗ることにした。参加申し込みなどの段取りは、全て村田さんがやってくれた。大雑把そうで、実はとても緻密な人なのだ。

 

この当時、フレネ教育についての文献もあまり紹介されていなく、インターネットも普及していないので調べようがない。国会図書館で検索してもあまり出てこなかった。神田の書泉グランデ(当時一番大きな本屋だったと思う)で買い求めたのが、『手仕事を学校へ―人民の学校のために』C.フレネ 宮ヶ谷徳三訳(黎明書房1980)

※ この本は、まだ入手可。

『手仕事を学校へ―人民の学校のために』を読み、フレネ教育のガイドラインをかじった。村田さんに里見実さん(国学院教授)を紹介され、参加のための下準備を少しずつ行なった。

※ 里見 実(1936~)

当時、國學院大學教授。教育誌「ひと」編集委員も。ブラジルの教育学者パウロ・フレイレ研究の第一人者でもある。多くのことを学ばせていただいた。

 

前もって三人で確認していたことは、次の二点だけ・・・。

・ 日本の管理教育の実態のドキュメントフィルム『羊たちの季節』のヴィデオを見てもらい、討論する

・ これの対極にある日本の民間教育運動の実践、例えば数教協の『水道方式とタイル』や木幡の明星学園での具体的な実践を紹介する

 

ぼくにとっては、初めての海外・・・。フレネ派の教師とじっくり話し合いたい、もっと知りたい・・・という期待。そしてぼくの実践が通用するのか?という不安・・・。1984年7月末、先発していた村田さんを追いかけ、里見さんとともにパリに飛んだ。パリまでの十数時間・・・、アエロフロート機内でひたすら飲んでいた・・・。

 

                                                      (続く)

 

 

 

 

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