デイリーフレネ

VOL 1522 2009.06.06

対話による見極め―テクストを超えるために(4)

PARAT 3 桃太郎像の見直し―童謡から見極める

さて五味太郎の『ももたろう』(絵本館)は、桃太郎と鬼の共生(異質なものの共生・共存)という観点で書かれているのだが、この観点で童謡や唱歌の『桃太郎』を見ても面白い。


まず童謡『桃太郎』を見てみよう。
三番・四番はこうだ。


【三番】
そりゃ進めそりゃ進め、
一度に攻(せ)めて攻めやぶり、
つぶしてしまえ鬼が島。
【四番】
おもしろいおもしろい、
のこらず鬼を攻めふせて、
分捕物(ぶんどりもの)をえんやらや。


とにかく、すさまじい・・・。対話もへったくれもない。一方的な桃太郎側の価値観から鬼を見て攻撃している。この観点はかつて鬼=鬼畜米英という戦争のプロパガンダとして利用された。


※ 桃太郎観の変遷については『桃太郎像の変容』滑川道夫(東京書籍 1981)や『桃太郎の運命』(NHKブッックス 1983)に詳しい。これらの文献は、いずれも絶版になっていて古本屋か図書館で調べるしかない。『桃太郎像の変容』はかなり高い。ぼくは、新宿図書館を利用した。『桃太郎の運命』は、古本屋で手ごろな値段でゲット。

この対極・・・、鬼の立場からみた童謡がこれだ。


『鬼の子守唄』 阪田寛夫作詞・中田喜直作曲


鬼が島の鬼の子は
やっぱり夜ふけに泣くのです
こわいよ かあちゃん
桃太郎がきたよ
はちまきしめて
のぼりもたてて
ガッパ ガッパ ガッパ ガッパ
海からきたよ
ねんねよ ぼうや
桃太郎もねんねだよ
西の空まっくろけ
東の空まっくろけ
ガッパ ガッパ ガッパ ガッパ
こんやはさむい
鬼が島の鬼の子は
やっぱり夜ふけに泣くのです


『桃太郎』というテクストを完結したものとして読むのではなく、鬼の立場から読んでみても面白い。
(PART4に続く)

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