デイリーフレネ

VOL 1527 2009.06.16


『いろんな世情がありまして、人はそれぞれ惑います・・・』(4 )


PARAT 3 どれが放送禁止歌かな?―歌は世につれ・・・


ネタ本は『放送禁止歌』森達也(知恵の森文庫 光文社 )なんだけれど、この本、ぼくは三冊持っている。2000年に解放出版社からでた単行本、そして2003年にでた上述の文庫本、そして、その2冊が本棚の中のどこにあるかわからずさらに購入した文庫本。
購入後、2冊とも出てきた。

亡くなった高田渡も放送禁止歌を幾つか歌っていたが、法的な問題は特にない。この歌を放送するとどこからかクレームがついてしまいそう...、ならば放送しないほうが無難...。
『これでその歌の意味するところを考えるコミュニケーションが閉ざされてしまう』と森さんは書いている。そう!放送禁止歌なんて、本当はない!
一体何が問題なのかを考える授業をやってみた。


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放送禁止になる歌ってどんなものかな?
「歌詞が卑猥なもの」
「政治的な歌詞とか」
「公俗に反する!」などなど・・・。


では実際に何曲か聴いて、この中のどれが放送禁止歌か考えてみよう!
聴いた歌は...
(ア)自衛隊に入ろう(高田渡)
※ 一大ブレークし、自衛隊の広報からテーマソングに乞われたとか...。
(イ)イムジン河(ミューテーションファクトリー他)
※ つい最近の映画『パッチギ』のテーマソングにもなった。
(ウ)夢は夜ひらく(三上寛)
※ 宇多田ひかるのお母様もかつて歌っていた
(エ)竹田の子守唄(赤い鳥)
※ 加藤登紀子や森山良子も歌い、教科書にも載録されていた


なんと四曲とも!これすべてが放送禁止歌!
例えばイムジン河の歌詞の一部はこうだ。


イムジン河水清く とうとうと流る
水鳥自由にむらがりとびかうよ
我が祖国南の地 おもいははるか
イムジン河水清く とうとうと流る


これが政治的問題になるなんて...。当時、北朝鮮側の組織<朝鮮総連>がクレームをつけたそうだが、近年、井筒和幸監督の名作映画『パッチギ』の主題歌として取り上げられた。


早もゆきたや この在所越えて
向こうに見えるは 親の家


かつて赤い鳥が歌っていた<竹田の子守唄>の一節。この中の単語が問題になって放送禁止になった。
「え?なんでこれが禁止なの?」
歌詞に出てくる単語を調べる。それとは知らずに歌い継がれてきた歌だけれど、差
別用語がふくまれている。
未開放部落という不条理な政治的装置について解説する。
「そんなの絶対よくない!」
 実は私たちの身近にあふれている差別問題。その事実に向き合い、では私たちはどう生きるべきか...考えることが大切。


放送禁止歌は放送局各社の自主規制を現しているに過ぎない。これらの歌を放送することで生まれてくる反響に真正面から取り組んでいき、そこからダイアローグを生み出していこうと考えるなら、勇気を持って放送していくのがいいのかもしれない。 でも、みんなびびってしまう。
 学校とは一味違うお授業でした。世情なんてころころ変わる・・・。
(エピローグに続く)

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