デイリーフレネ

NO 1585 対極の行動『直接か?間接か?』(3) 2011.09.15

Part 2 あるフリースクールの取り組み―『コーラル熊谷』の場合

 

学校でなかなか出来ない活動のひとつとしてダイレクト(直接的)な活動がある。今回の大震災の場合、ボランティアとして直接、被災地に出向いていくというような活動だ。フリースクールは、学習指導要領に縛られないのでスタッフや生徒がダイレクトな活動を組織することができる。

 

『コーラル熊谷』は、ジャパンフレネのスタッフをしていた手島洋さんが、ジャパンフレネ熊谷の後を引き継いでオープンした小さなフリースクールだ。小さいからこそ、小回りが出来る。今回の大震災では、アクションが速かった。その様子をブログ『今できること』とから見てみよう。物資の配送からスタートした活動は、ダイレクトなボランティア活動へと発展していく。

 

 

僕たちは早朝ボランティアセンターに到着するようにしています。身支度をしてから受付に行きます。受付は並ばずに完了でき、あっという間にマッチングという仕事の割り振りの段階になります。

マッチングも「4人グループです」と言うだけで、その場で担当の人から『ニーズ表』と呼ばれている依頼書を渡されて完了です。受付から10分も経ちません。時間を選んでいけば、即仕事を割り振られることになります。その後、ボランティアセンターに準備してある道具を必要な分だけ持ち、自分たちの車で依頼主のお宅まで向かいます。ちなみに、渋滞のニュースも出ていますが、ボランティアセンター内の駐車場が混雑している場面に出会ったことはありません。その代わりと言っては何ですが、街中で見物しているような印象の車はちょくちょく目にします.

 

 

お手伝いのお宅についたら、挨拶の後、作業開始です。2度とも庭の泥出しが主な作業でした。泥と言っても、重油の様なものです。2~3センチの黒くタール状の層が、庭一面に広がっています。それをスコップ、シャベルなどを使ってひたすら土のうに入れて運び出していきます。乾燥している部分は風で舞ってしまいます。化学物質が混じっているという話もあります。目に入ると大変です。水分を含んでいる部分はなかなかのさです。臭いは言うまでもなく独特です。町中がこの臭いで充満しています。

 

泥の中には、どこから流れてきたのかわからない、写真、ちぎれた卒業アルバム、手紙などあらゆる思い出の品が入っています。「探していた!」というものが出てきたときが、ホッと嬉しい気持ちになる瞬間です。時には、家具や電化製品を運び出します。さっと捨てられることの方が少なく、「一度も使わなかったよ」とか「買ったばかりなのに」とか.耳を傾けるしかできない中、作業をしていきます。明るくお話してくれているところが、さらに胸を締め付けられる気持ちになります。

(中略)

 

2回ともご家庭の方にはいろいろと親切にしていただきました。飲食の準備はもちろん自分たちでしていくのですが、いつも差し入れをいただいてしまいます。いろいろと話も聴かせてもらいました。積っている思いがあることも強く感じます。先週行ったお宅の方は「復興なんてまだまだ。復旧の段階だから」とおっしゃっていました。これは、実際に自分たちが肌で感じるところでもあります。

時には思いがけぬ話を耳にすることもあります。戦時中のこと、炭鉱での出来事.。何か引き寄せられているような気持ちの中、時間が流れていきます。いろんな人の歴史が溢れ出しているようです。

 

衣食住が成り立っていないところが、まだまだたくさんあります。作業着を着ている僕たちと一緒に片付けをしていたお宅の方は、ウールのコートを泥だらけにして作業しているような状況でした。毎回寄っている避難所は、空気がさらに重くなっていました。

確かに初回は通れなかった道が2回目には通れるようになっていたりと、整理されてきているところもたくさんあります。けど、「生活」という面からみると、まだまだやることは山積みです。そして、これは時間が経てば経つほどあらゆる体力を奪っていく状況だと思います。早くなんとかしないと、というのはボランティアに行ったメンバー全員の感想だと思います。

 

まだまだ余震の心配もあるので安易に現地ボランティアを勧めるわけにもいきませんが、もしも時間と交通費と気持ちがあるならば、現地に行ってできることはたくさんあると思います(ちなみに高速料金が免除になる書類は各自治体で発行してもらえます)。もちろん、いろんな形での支援を表明している団体があります。情報の集め次第で、関東にいてもできることはたくさんあると思います。

 

今回、模索しながら行動している理由には、実際に動く姿を自分が見せておくことでみんなに繋がるものが何かあるかもしれないという思いなどもあるのですが、一番は「今ここで腰を上げなかったら、一生次に上げることはないだろう」といった内容の文章を読んだからです。拙い文章と、乱文ゆえに伝わりづらいとは思いますが、とにかく非常事態です。

 

まで行ったことのない土地に対して、この様な気持ちになるのは今まで体験したことがないので何とも表現できません。高速を運転しながら、ふと「何でだろう??」と不思議な気持ちになります。そんなですが、コーラルでは時間を作って再度現地に行けるようにしたいと思っています。

(『いまできること その92011512日

                                                           (続く)

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