デイリーフレネ

NO 1652  小説『記憶』という名のあなたをたずねて(1)

木幡自身のブロは、久しぶり、いや5年ぶり!

しばらくは、こちらもアップします。


小説 『記憶』という名のあなたをたずねて(1)


―北野 洋(きたのひろし)の記憶と希望

          

プロローグ

希望という名の あなたをたずねて
遠い国へと また汽車に乗る
あなたは昔の わたしの思い出
ふるさとの夢 はじめての恋
けれどわたしが 大人になった日に
黙ってどこかへ 立ち去ったあなた
いつかあなたに また逢うまでは
わたしの旅は 終わりのない旅

          『希望』歌詞一番(藤田敏雄作詞・いずみたく作曲)

 

1969年、バリケード封鎖された大学構内で、北野はこの歌を知った。

ヘルメットを被ってギターをつま弾く同級生に先輩が怒鳴りつける。

「そんな軟弱な歌、歌うんじゃねえよ!歌うなら、インターナショナルを歌え!」

(ああ、革命なんか起こりっこないよな・・・)北野はそう思った。

当時、流行っていたカレッジフォークの人気グループフォー・セインツが『小さな日記』に引き続きリリースした『希望』・・・。

どんな時代でも若者は自己の経験や記憶をベースに夢や希望を語るものだ。

軟弱だとか体制的だとか言われようが、今、若者―いわゆる大衆・ノンポリ一般―が何を考えどう生きようとしているのかくみ取る度量がなければ、革命なんか夢のまた夢に決まっている。


当時北野は、ヘルメットを被りながら童話を書いていた。所属している児童文学研究会の先輩で作詞家を目指しているAさんに訊いてみた。

「先輩、この詞を書いている藤田さんてどんな人ですか?」

パソコンやインターネットなどない時代、作詞業界のつてでAさんは、藤田敏夫について調べてくれた。

 

  藤田 敏夫(1928年~)

 宝塚歌劇団文芸部を振り出しに、劇団四季を経て、労音ミュージカルの制作(脚本、作詞、演出)を担当。日本の創作ミュージカルの草分け的存在。1964以降は、テレビ朝日の音楽番組「題名のない音楽会」の企画構成を担当。作詞の代表作として「約束」「若者たち」「希望」がある。

 

「この詩は、倍賞千恵子のミュージカルのために作詞したみたいなんだけれど、曲がスローで6分半近くかかるんだよ。それでレコーディングしなかったみたいだぜ。フォー・セインツがテンポアップして4分強になったから、リリースしたみたい」

(そうか、テレビドラマ『若者たち』のテーマソング『空にまた陽が昇るとき』を作詞した人だったのか・・・)


学生運動の限界を知り、大学をドロップアウトしようとしていた北野は、以来、ことあるたびにこの詞とメロディーを口ずさんで過去の記憶を呼び起こし、そこから夢や希望を見出してきた。

 

この歌が、翌年岸洋子のカバーで大ヒットすることを北野はまだ知らない。

(続く)


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