NO 1676 阿部進への道 ― 過去への課題 (4) 2018.12.10
PARAT3〈 過去⇔未来 〉への道
―古きを訪ねて新しきを知る
最後に、1961年に出版され大ベストセラーになった『現代子ども気質』阿部進(新評論)の中から、現在注目されていることとの関連性を探ってみたい。50年以上前でも全然古くないことがわかるだろう。
●「友だちに聞くという事は大変なことです。(中略)同じことを習ったどうしから聞くということは、自分がそれについて劣等であることを認めたことになる。」
「異質なものがそれぞれの特質を持ちよって作業したほうが能率があがるし、一のものを十にすることも可能なのだ」
『6生活を伸ばす勉強の力(4)専門家 』
Ⅲ子どもと学習・労働より
※ これは昨今話題になっている〈インクルーシブ教育〉や〈学び合い〉に通ずるものがある。
●「一九二四年の第三次登山隊は、登山史上有名な英雄的悲劇によってまくをとじた。六月八日、八、二00メートルのだい六キャンプからマロリーとマービンのふたりが頂上をめざした・・・それもまたたく間で、再び、きりが頂上をかくしてしまった。それ以来、ふたりは永久に帰らなかったのである。」
「人間はなぜ、このように命を的にしても、世界の最高峰エベレストに登らなければならないのであろうか。マロリーは事もなげにこれに答えた。『なぜなら、それがそこにあるからだ』」
『2 なぜならそこにそれがあるからだ 』
Ⅲ子どもと学習・労働より
マロリー達はエベレストに初登頂したのではないかと、今でも話題になるテーマだ。子どもたちの興味関心を引き付ける読み物!なぜ登るのかという疑問、そしてマロリーやアービンの家族のことへ・・・。
阿部進は、こう言う。
「エベレストにいどむ」はおもしろい授業展開になりました。「山にいどむ」という内容のむずかしさと、女の子の気持ち、男の子の気持ち、自分がその家族の一員であったらどうであろうかと問題設定を自分のこととして考え、そこから発想していく。自己経験を主として割り出すため、やはり独断的な結果におちいりやすい欠陥はもっていても、なんとか広い視野から自分の考え方をハッキリさせようとしている点収穫でした。
※ 文部科学省がやっきになっているアクティブラーニング・・・。
形ではなく教材であることを指し示している。
その他にも、新聞配達の具体例をもとにした学校知と日常知の違い、それに連なる暗黙知、あけっぴろげな性教育、戦争や平和の日常的な問題など、現在に通ずる諸問題を論じている。古きを訪ねて、新しきを知ることができる。
―続く―