デイリーフレネ

NO 1680 après-coup(アプレ・クー)への道―迷うための地図を求めて(3)2019.11.26



Part2 長崎プロジェクト=アプレ・クー-リゾームという迷宮・迷路

 

フリースクールジャパンフレネでは、子どもの疑問や発想から授業を作る。これ自体、バックキャスティング的授業なのだが、思いもよらない方向にに授業が動いていくことがある。それは線形的になる事はまれで、「これとあれがどうして結びつくのだ?」、「結びついた後、こういう結果が生まれてくるとは!」など根茎的な広がりを持つ。

そういう授業は、年に一回できるかどうか・・・。そして、それは一生にたった一回しかできない授業でもある。同じ授業をしようと思った途端、それは大人のルートに子どもを乗せる事であり、やらせ=フォアキャスティング的授業になってしまうし、土台こどもが違うのだから、同じ授業ができるはずもない。そして、これは教師のセンスも問われる厳しい授業でもある。教え教えられる関係を超える迷宮・・・。

 2018924日~2019324日にかけて断続的に行われた授業は、結果として『長崎プロジェクト』に結実した。こんな感じで・・・。まさしく、après-coup・・・。

 

   『写真を読む―トランクの中の日本』いつ・どこで・だれが・なにを・どうしたか

 米軍従軍記者が写した有名な『焼き場の少年』の写真を読み取る。

戦争が終わった後、一人の少年が弟を背負い直立不動で立っている。

1945年の89日の数日後、長崎の火葬場で一人の少年が弟を背負い、直立不動で立っていた。

少年の弟はすでに死亡している。

こんな感じで写真を読んだ。

 この写真は原爆投下後の長崎での出来事。

子どもたちは、つぶやく。「長崎に行ってみたい・・・」(après-coup

   この少年を知っています

この授業をブログにアップしたところ、以前フレネに通っていた子の保護者より連絡あり。

「この少年のこと知っています。以前の職場でこの写真のことが話題になり、その時『これ、ぼくなんだよ』と私につぶやいた方がいるんですよ。名前も知っています」

 この少年のその後の消息も名前も知られていない。職場と名前からある程度のことは分かったが、個人情報開示の関係で進展せず。現在も調査中・・・。(après-coup

※ ローマ教皇の来日で、この写真が再び脚光を浴びている。

   ムンクの叫び

ムンク展に行った後、『ムンクの叫び』のポーズをとる。叫びなのに耳を押さえているのは何故かを考える。この時、子どものつぶやき「ムンクってだんだん絵がへたになっていってるよね」

絵がうまい下手、好みは人によって違う。

   長谷川集平さんのマリア様

 フェイスブックでつながっている長崎在住の絵本作家長谷川集平が描いたマリア像、カトリック系の雑誌の表紙を飾る予定も、神父全てに否定される。

その絵を子ども達に見せる。どうしてこれが否定されるのかわからない子ども達。

このことをフェイスブックにアップしたところ、長谷川集平さんより連絡あり。長崎で交流会を行うことが決まる。(après-coup

   長崎プロジェクトが進行する

長崎についてのシンキングマップを作り、隠れキリシタンチーム・長崎のジャガイモチーム・佐世保バーガーチームなどで調べ学習。『隠れキリシタンに至る道筋』の授業。(après-coup

   軍艦島は浮いている?

 軍艦島についてあれこれ調べる→炭鉱はなぜ無くなったのか?

教え子より連絡あり、「母が以前軍艦島に住んでいた。二階建ての家だったらしい」(après-coup

後日、軍艦島ツアーのガイドに訊いてみると「えっ1二階建ての家?それは軍艦島で一番偉い人、炭鉱長の家ですよ」三菱端島→三菱美唄→『幸せの黄色いハンカチ』(après-coup

日本初の高層住宅、日本最高の人口密度

   読み聞かせ

 長谷川集平さんの絵本をほぼ全て読み聞かせ、アニマシオンの実践。

同時に原爆についても読み聞かせを行う。『原爆に至る道筋』の授業

   寺脇研さんからの連絡

「木幡さん、体験学習で長崎に行くって?ぼくが定期的に通っている大学の学生をボランティアとしてガイドにつけようか?」(après-coup

懇意にしている元文部官僚の寺脇研さんからの連絡により、長崎純心大学とつながる。

学生が作った長崎平和ガイドで平和学習。長崎市内の見学場所を決める。(après-coup

   34日の長崎プロジェクト

 長谷川集平さん宅で交流会、長崎じゃがいも研究所訪問、原城跡と隠れキリシタン資料館見学、

長崎市内見学(原爆資料館、浦上天主堂、大浦天主堂、城山小学校、出島、その他たくさん、ボランティアのお姉さんに案内していただく)

   軍艦島、26聖人記念館見学

   プロジェクト感想とお礼の色紙

たくさんの方にお世話になった。原城跡を案内してくれたガイドさん、いかにも元教員風で命令口調。子ども達、敬遠。最後に「あいさつしましょう。気をつけ!」で、ドン引き・・・。

このおじいさんにお礼の色紙を送ろうと言う子は一人もいなかった・・・。(après-coup

   学習発表会で長崎プロジェクトの発表

   ~⑫まですべてがミックスされ、行き先は未知、しかも迷路の中で悪戦苦闘しながら長崎にたどり着いた。これが終着駅ではない。ここから先は、それぞれが拡散し、それぞれのアプレ・クーが始まるのだ。計画していた絵本作りがまだ終わっていない。

 

『はせがわくんきらいや』は、本当の話なんでしょう?

ねえ、この絵本、長谷川さんの実際の体験なのかなあ?

昔あったことを女の子に置き換えて書いたのかなあ?

それとも、想像の世界なのかなあ?

 

それを長谷川さんに訊きたいなあ・・・。

あと、絵を描く場所・・・、アトリエって言うの?

そこもみてみたいなあ・・・。

               (ヒロカズ)

 やってみなくてはわからない。一点突破しなきゃ見えてこない。

だから、長崎に行ったのだ・・・。

                        (続く)


日々の状況や教育エッセイをJF代表・木幡が執筆。
メールマガジンでもお届けしています。
登録はこちらから

インデックス

NO 1681 après-coup(アプレ・クー)への道―迷うための地図を求めて(4)2019.11.27

NO 1680 après-coup(アプレ・クー)への道―迷うための地図を求めて(3)2019.11.26

NO 1680 après-coup(アプレ・クー)への道―迷うための地図を求めて(2)2019.11.25

NO 1679 après-coup(アプレ・クー)への道―迷うための地図を求めて(1)2019.11.23

NO 1678 村田栄一におけるリフレクション 2019.0606

NO 1677 阿部進への道 ― 過去への課題 (5) 2018.12.11

NO 1676 阿部進への道 ― 過去への課題 (4) 2018.12.10

NO 1675 阿部進への道 ― 過去への課題 (3) 2018.12.06

NO 1674 阿部進への道 ― 過去への課題 (2) 2018.12.05

NO 1673 阿部進への道 ― 過去への課題(1) 2018.12.05

No1672 小説『お行儀―佳子と北野洋の場合』(5)

No1671 小説『お行儀―佳子と北野洋の場合』(4)2018.11.20

No1670 小説『お行儀―佳子と北野洋の場合』(3)2018.11.19

NO1669 小説『お行儀-佳子と北野洋の場合』(2) 2018.11.14

NO1668 小説『お行儀-佳子と北野洋の場合』(1) 2018.11.13

小説『プライドと悔恨』―北野 洋の場合(4)2018.11.08

小説『プライドと悔恨』―北野 洋の場合(3)2018.11.08

小説『プライドと悔恨』―北野 洋の場合(2)2018.11.07

No 1665 小説 『プライドと悔恨』―北野 洋の場合(1)2018.11.6

NO 1664 道を問うても答えなく 徳はどこにあるのやら(3)2018.11.02


週別アーカイブ

バックナンバー

バックナンバー 2004 2003 2002 2001 2000 1999